診療科・部門のご案内

前十字靭帯損傷

 バスケットボールやバレーボールなどで、ジャンプして着地した時に、膝がガクッとずれた時などに、前十字靭帯が断裂します。腫れや痛みは、2,3週間で軽減しますが、その後、スポーツを開始すると、簡単に膝くずれを繰り返すようになります。前十字靭帯は膝関節の中央にある、大腿骨と脛骨を繋いでいる紐状の組織で、断裂すると脛骨が前にずれるようになります。この靱帯は、一旦切れると安静にしていても再生することはありません。従って、スポーツを再開するためには、手術をして靱帯を再建する必要があります。

当院では、年間50件(平成26年度)の前十字靭帯再建術を行っています。入院期間は約2週間で、退院時は膝用の装具をつけての松葉杖歩行ですが、術後3週間程度で松葉杖が不要になるケースが平均的です。退院後は週1回程度のリハビリが必要で、スポーツへの復帰は6から8ヶ月を要します。

半月板損傷

 半月板は、膝の大腿骨と脛骨の間にある軟骨性のクッションです。スポーツで膝を捻った時などに損傷することがあります。断裂した半月板が関節の間にひっかかると、痛み、動きの制限、ひっかかり感などの症状が出現します。当院では、3日間の入院で関節鏡による手術を行っています。半月板の一部が断裂している場合は傷んだところを切除することもありますし、辺縁で大きく裂けている場合は縫合します。手術の翌日から荷重歩行可能ですが、半月板を縫合した場合は装具を着けて、2週間膝を曲げないようにします。

変形性膝関節症

 変形性膝関節症は、変形性関節症の中でもっとも多く、「年をとって膝が痛い」という場合のほとんどがこの病気です。女性に多く、O脚変形を伴うことがほとんどで、内側の関節面の軟骨が擦り減ります。症状は、長く歩くと痛む、正座ができない、階段がつらい、といった症状から始まり、徐々に立ったり、歩いたりがつらくなってきます。一方で、じっとしていると痛くないのが普通です。
 進行してくるとO脚変形が強くなり、膝は慢性的に腫れてきて、曲げ伸ばしの角度が悪くなってきます。

 診断は、主に症状とレントゲンで行います。
 症状は、曲げ伸ばしの角度、関節面の痛み、腫れや水などの所見をみます。
 レントゲンでは、関節のすき間(軟骨の厚み)の減り、余計な骨の出っ張り(骨棘:こつきょく)、骨そのものの摩耗、などの変化をみます。

 治療は、内服薬、外用薬、注射、理学療法、手術などです。

 内服薬は、消炎鎮痛剤が主になります。
 常用すると胃潰瘍などが心配ですので、痛みが強いときだけ、あるいは、外出の予定がある時だけ服用するといった服用方法が良いと思います。

 外用薬は、経皮吸収性の消炎鎮痛剤のはいった湿布、塗り薬を使います。冷湿布がいいか、温湿布がいいかはよく聞かれることですが、今の外用薬は消炎鎮痛成分の効果を期待しているので、大きな問題ではありません。

 注射は、主にヒアルロン酸という関節液や軟骨の成分を含んだ注射剤を良く使います。潤滑剤としての働きや炎症を抑える効果もあります。また、ステロイド剤を使うこともあります。ステロイド剤は、炎症や痛みを抑えるのに高い効果がありますが、使いすぎると逆に軟骨や靱帯を弱くすることがあります。

 進行した変形性膝関節症に対しては、人工膝関節全置換術を行っています。
 曲げ伸ばしの角度が悪い、O脚変形が強い、膝の痛みのために10分程度までしか歩けない、といった症状が続き、注射や内服薬などでは改善しない場合には手術を検討します。
 もちろん、年齢やレントゲン所見、患者さまの希望などを考慮して手術の適否を決定します。

人工膝関節手術について

 進行した変形性膝関節症に対しては、人工膝関節全置換術を行っています。
 曲げ伸ばしの角度が悪い、O脚変形が強い、膝の痛みのために10分程度までしか歩けない、といった症状が続き、注射や内服薬などでは改善しない場合には手術を検討します。 もちろん、年齢やレントゲン所見、患者さまの希望などを考慮して手術の適否を決定します。

 人工関節といっても、上下の骨を切って蝶番をつけるといった手術ではありません。関節面を取り替える手術で、筋肉や靭帯は概ね元のままです。
 この手術では、膝の前を約13cmから15p切開して関節を開き、傷んだ関節面の軟骨と骨を切除して、チタン製の「人工関節」をかぶせます。時間は1時間半から2時間程度です。

 手術後には、3〜4週のリハビリテーションを行います。手術の2日後には車椅子、3日後からはリハビリ室で立ったり、歩いたりのリハビリを始めます。個人差はありますが、平均して1〜2週間程度で杖歩行が可能となります。
 伊奈病院では、年間90件(平成26年度)の人工膝関節手術を行っています。

膝関節の置き換え  手術のキズ

人工膝関節全置換術のレントゲン

変形性膝関節症に対する人工関節置換術の一例

変形性股関節症

 変形性股関節症は、股関節の軟骨が摩耗し、痛みや可動域制限を生じる病気です。
 多くの場合、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全症が原因です。臼蓋形成不全症は股関節の骨盤側の受け手である臼蓋が浅い状態で、関節の一部分に荷重がかかりやすいため軟骨が磨耗しやすくなります。
 長距離歩行で脚の付け根が痛む、股関節が広がりにくいなどの症状から始まり、徐々に日常生活への影響がでてきます。

 治療は、リハビリテーション、消炎鎮痛剤などの内服薬および外用薬、手術です。
 体重が増えると痛みが出やすく、逆に減量により痛みを軽減し、進行を遅らせることができます。

人工股関節全置換術について

 変形性股関節症が進行して、痛みが強くて短時間しか歩けない、関節の動きが悪い、膝や腰の痛みも出ていた、といった場合には人工股関節手術を行います。この手術は痛みをとる効果が高く、長期成績も良好です。リハビリの進みも手術件数が年々増えています。

 この手術では、傷んだ臼蓋にチタン製のカップを設置して、大腿骨の骨頭もチタンやセラミックに取り替えます。キズは小さく、股関節の外側部分に10pほどです。

 手術後には、2〜4週のリハビリテーションを行います。手術の2日後には車椅子、3日目以降は立ったり歩いたりのリハビリ、7〜14日以降は歩行器または杖歩行を行います。退院時には、屋外での歩行や階段昇降もできる状態になります。

 調基成績は良好で、95%以上の方が20年以上もちます。
 伊奈病院では、平成26年度に40件の人工股関節手術を行いました。

変形性股関節症のレントゲン

関節リウマチ

 関節リウマチは、複数の関節に炎症が続き、軟骨や骨がいたんでいく病気です。
 原因は明確にはわかっていませんが、免疫の異常によっておこると考えられています。40〜50才台が好発年齢で、男性に比べて女性に多いことも特徴です。

 関節リウマチが疑われたら、さまざまな検査をして診断します。
 多い症状は、朝のこわばり、複数の関節の痛みや腫脹、手や指の関節炎などです。こうした症状がある場合は、血液検査をしてリウマチの治療を始めるかどうかを決めます。
 最近のリウマチ治療薬は効果が高く、多くの場合、炎症や症状を緩和することが可能です。

骨粗鬆症

 骨は常に、古い骨を溶かして新しい骨を作るという新陳代謝を続けています。通常は、骨形成と骨吸収のバランスがとれていますが、閉経後や高齢の方では、このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると、骨が弱くなり、骨粗鬆症となります。骨粗鬆症が進むと少し、転んだだけでも、簡単に骨折を起こすようになります。

 骨粗鬆症で起こしやすい骨折は、脊椎圧迫骨折(背骨)、大腿骨近位部骨折(脚の付け根)、上腕骨近位骨折(肩)、橈骨遠位端骨折(手首)です。
 骨粗鬆症の診断は、レントゲン検査や骨密度測定で行います。当院では、腰椎や大腿骨近位部といった、骨密度測定の基準となる部位の測定ができる機器があり、手や前腕、踵の骨で骨粗鬆症を指摘された方に対しても、より正確な診断が提供できます。
 また、血液検査では骨代謝マーカーをはかります。これは、現時点でどの程度の速さで骨が溶けているかがわかるものです。骨密度と組み合わせると、「現在、どれくらい貯金があるか?」と「現在、どれくらいの速さで貯金を取り崩しているか?」がわかるわけです。

 骨粗鬆症の治療は、薬剤が中心で、カルシウム剤、ビタミンD、ビタミンK、ビスホスフォネート、ラロキシフェン、テリパラチド、デノスマブがそのラインアップです。順番に説明します。
 カルシウム剤は、その名の通りカルシウムの補給です。カルシウムが不足するとやはり骨が弱くなります。牛乳が飲めず、魚なども摂取が少ない方は、薬で補給するようにした方が良いでしょう。ただ、必要以上にカルシウムを摂る必要はありません。
 ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促します。日光があたると皮膚で合成され、1日に顔と手に15分以上、日光にあたれば十分とされています。ただ、あまり日中に外出しない方が、薬として飲んでおいた方がよいでしょう。ビタミンDは筋肉にも効果があり、転倒予防の効果もあることがわかってきました。
 ビタミンKは、納豆などに含まれ、骨の質をよくして骨折を予防するといわれています。
 ビスホスフォネートは、「朝起きてすぐ飲む薬」です。薬の成分が身体の中に取り込まれたあとで骨にくっついて、骨が溶けていくのを防ぎます。効果が高く、骨密度を半年で5%から10%近く増やすこともあります。
 ラロキシフェンは、女性ホルモンと同じような作用で骨が弱くなるのを防ぎます。女性ホルモンを長く服用すると乳がんや子宮がんの発生率が増えることが知られていますが、この薬はもともと乳がんの再発予防薬と同じ系統の薬で、乳がんの発生を4割に下げる効果が証明されています。また、コレステロールも下げることがあり、いろいろな意味で役に立つ薬です。
 テリパラチドは副甲状腺ホルモンの薬で、現在唯一の骨形成促進薬です。骨密度がとても低い場合、圧迫骨折が複数ある場合など、重症の骨粗鬆症に使われます。痛みをとる効果が高く、寝たきりに近い方が、散歩もできるようになる例もあります。
 デノスマブは、骨を溶かす作用の破骨細胞を抑制することで、骨を強くする注射です。半年に1回の注射です。
以上の薬の中から、適切な薬を選んで処方します。

脊椎顕微鏡視下手術について

伊奈病院では腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患に対し、低侵襲手術のひとつとして顕微鏡を用いた腰椎椎弓形成術や、顕微鏡を用いた腰椎椎間板摘出術を積極的に実施しています。今回、これらの脊椎顕微鏡視下手術について御紹介いたします。

背景

近年、内視鏡を用いた脊椎手術が急速に普及していますが、この内視鏡手術は、関節腔のない脊椎に空間を作り内視鏡モニター画面をみながらの手術で、深部感覚がつかめ難く、目で見る感覚と手を動かす感触のズレを生じることがあります。我々は、患者様に安全で正確な手術を実施するため、顕微鏡を用いた低侵襲手術を実施しています。これらの手術は、小さい皮膚切開で棘突起、棘間靭帯の温存が可能で、顕微鏡により肉眼で見えにくい神経周囲の観察がより正確となり、三次元的感覚も十分得られ、安全で正確な手術が可能になります。また、万が一、神経の硬膜が損傷されるなどの合併症が生じた場合でも、すぐに対応できるのも大きな利点です。

手術の実際

全身麻酔後患者を腹臥位で両膝を立てた状態として、背中の中央に約30mmの皮膚切開を置きます。棘突起,棘間靭帯を温存して脊柱起立筋群を椎弓から椎間関節を傷つけないように注意して剥離します。Casper開創器を挿入して術野を確保します。椎弓をエアトーム(スチールバー)という特殊な機械で荒削りし、その後顕微鏡を導入し、顕微鏡視下でエアトーム(ダイヤモンドバー)にて椎間関節を損傷することなく慎重に上.下位椎弓と下位上関節突起の一部を削り黄色靱帯を露出させ、一塊として除去します。上関節突起に付着している黄色靭帯の残存を一部骨組織とともにケリソンで切除し、硬膜と神経根の除圧を確認します。椎間板ヘルニアの場合は、神経鉤で硬膜、神経根を保護しながら、ヘルニア鉗子でヘルニアを摘出します。脊柱管狭窄症の症例では、基本的に反対側も同様の操作を実施します。血液を排出する管は、手術中に出血が著明でない限り留置していません。

 

症例の提示

81歳女性で左下肢痛、歩行障害を主訴に来院されました。数年前から主訴が出現し、近医で投薬、リハビリテーションなどを受けられたのですが、下肢痛は一向に収まらず、当科受診されています。受診時、左L5神経領域の下肢に痺れと痛み、筋力の低下の所見あり、連続して歩行できるのは5分のみ、立ち続けるのも難しく、台所での料理は座ってなさっているとの事でした。MRIにてL4/5高位に脊柱管狭窄を認めました。JOAスコアは11/29点(29点が満点で健常に近い状態)で、この患者様に対し顕微鏡視下椎弓形成術を実施いたしました(手術時間139分、出血40g、創部長30mm)。術後経過は順調でJOAスコアは25/29点に改善しており、2〜3kmは休みなしで歩行できるようになっています。術前と術後のMRIを供覧いたします。術後MRIでは狭窄が改善され、神経が膨らんでいるのがお分かりいただけると思います。

 

創の大きさについて

創部長: 34.2mm( 20〜50mm)
      腰椎椎間板ヘルニア 33.5mm ( 20〜50mm)
      腰部脊柱管狭窄症 35.1mm( 28〜50mm) p=0.4313

創部長はだいたい五百円硬貨の大きさになります。

患者様へ

腰椎疾患に対する顕微鏡を用いた脊椎手術の成績は良好かつ低侵襲です。内視鏡を用いた脊椎手術の成績と比較しても遜色ありませんし、リカバリーショットも可能で、むしろ安全な手術であると考えています。我々は、腰椎手術のみならず、頸椎の前方固定術、胸椎の手術でも顕微鏡を用いて安全で確実な手術を実施しています。
御相談の方は、 お気軽に伊奈病院・整形外科にお問い合わせください。